今回は断面一次モーメントを用いた応用問題を解いてみましょう。
断面一次モーメントが良く分からない方や、基本問題を解きたい方は下の記事を参考にして下さいね。
さて、今回は断面一次モーメントを用いた応用問題を解きたいのですが、その前に断面の図心に関する重要な性質を確認しておきましょう。
重心の重要な性質
断面一次モーメントを用いて図心を求めることが出来ましたよね。この図心、断面において重要な性質をもっています。それは
純粋な曲げを受ける断面では、中立軸が図心を通る
です。中立軸とは、部材に曲げモーメントが生じた際に応力度が0となる位置のことです(引張も圧縮も作用しない)。また、純粋な曲げとは、断面に軸力やせん断力が作用していない状態です。
下図のような純粋な曲げを受ける長方形断面を見てみましょう。

断面の高さはh、幅はbとして設定しました。そして、長方形断面なので図心位置は断面の真ん中にあります。断面の詳細と応力の情報を下図に示します。

応力の状態を見ると、中立軸では確かに応力度は0になっていますよね。そして、中立軸は確かに図心位置を通過しています。
純粋な曲げを受ける断面において、中立軸は図心位置を通ることを押さえましょう。
それでは、この性質を利用して、応用問題を解いて行きましょう。
応用問題

問題のヒント
まず、以下の点を押さえましょう。
・問題の断面は純粋な曲げを受けている→中立軸が図心位置を通る→図心を求める
・最も効率の良い、b1/b2の比率→圧縮側と引張側の両方で、許容応力度に同時に達する状態
最も効率の良いについて、もう少し補足します。
まず、効率の悪い断面を考えましょう。例えば、引張許容応力度25N/㎟、圧縮許容応力度75N/㎟の断面において、以下のような応力状態は効率が悪いです。

なぜなら、引張側が許容引張応力25N/㎟に達しておらず、断面にまだ余裕があるからです。すなわち、効率の良い断面は断面の能力を完全に使っている状態と考えることが出来ます。
以上の点を押さえて問題を解いて行きましょう。
解答
まず、図心位置をもとめるために、図心位置が分かる部分に断面を分解します。下のような図に分解しました。基準軸は断面の下端に取りました。

次に、①、②、➂それぞれの断面一次モーメントを求め、足し合わせます。

以上より、台形の図心位置は

となります。さらに、最も効率の良い状態を満たすという題意より

以上より、最も効率の良い比率を求めることが出来ました。
まとめ
今回は断面一次モーメントを利用した応用問題を解いてみました。少し難しかったかもしれませんね。一回で理解できなくても全然よいので、要点だけでも押さえましょう。今回のポイントは
純粋な曲げを受ける断面では、中立軸が図心を通る
でしたね。今回は以上の内容です。
ありがとうございました。