今回は仮想仕事の原理です。原理の基本的な説明と簡単な例題を解説します。仮想仕事の原理は構造力学の後半で学習する範囲です。真新しい概念が出てきて、良く分からないという方もいるかもしれませんね。実際、物理的な説明はとても難しいです。しかし、建築学生である私たちが、それを完璧に理解する必要はないでしょう。仮想仕事の原理を使って、計算が出来る状態をゴールに、気楽に慣れていきましょう。それでは、本題に入ります。
仮想仕事の原理
仮想仕事の原理とは、簡単に説明すると
外力がする仮想仕事 = 内力がする仮想仕事
が成り立つということです。もう少し説明を足すと、釣合状態にある物体が、十分小さい仮想変位(仮想的な変位)を受けたとき、外力がする仕事と内力がする仕事が等しいということです。難しいですね。以下の図を見てください。

糸で繋がる二つの物体が釣合っているとします。外力は右向きにFと左向きにF/2+F/2=Fです。さらに、糸から受ける引張力Tを内力とします。力の釣合条件より、F/2=Tが成り立ちます。
今、図に示すように、仮想的な変位Xが与えられたとします。このとき
外力がする仕事はFX – FX/2 – FX/2 = 0
内力がする仕事はTX – TX = 0
です。よって、外力がする仕事=内力がする仕事が成り立ちます。これだけ?と思うかもしれませんが、簡単に説明するとこれだけなのです。なにか当たり前のことのようですが、複雑に物体が組み合わさった時もこの原理は成り立ちます。
今回は、この原理を使って簡単な例題を解き、仮想仕事の原理の理解を深めましょう。
例題
仮想仕事の原理1-問題-min解答の手順
例題ではどのように仮想仕事を用いるのでしょうか。仮想仕事の原理を用いるためには、まず仮想の変位を置く必要があります。どこに仮想の変位を置くべきでしょうか。置くべき位置は決まっていて、求めたい内力が作用する点に仮想の変位を与えます。今回はC点に働くモーメントを求めるために、C点の回転拘束を外します。C点の回転角をどのように与えるかは、自由に決めてください。後は、外力のする仕事と内力のする仕事を求めます。まとめると以下の手順になります。
- 内力を求めたい点に仮想の変位を与える
- 外力のする仮想仕事と内力のする仮想仕事をそれぞれ求める
- 外力のする仮想仕事=内力のする仮想仕事より、内力を求める
それでは、実際に解いていきましょう。
解答
仮想仕事の原理1-解答1-min解答の補足
解答の手順に従って、まずC点の回転拘束を外しましょう。すなわちヒンジを挿入するイメージです。ただし、仮想的なヒンジであり、ヒンジ点のモーメントが0になる訳ではないです。本当はモーメントが作用しており、今回はMcとしています。回転拘束を外したら、仮想の変位が置けます。今回は解答の図のように仮想変位を置きました。その後は外力と内力がする仮想仕事をそれぞれ求め、仮想仕事の原理よりMcを求めることが出来ます。ちなみに、断面力解析からM図を求めると図のようになります。
仮想仕事の原理1-解答2-min確かに、C点のM図が求まっています。簡単な構造の場合、仮想仕事の原理を使う意味はあまり感じませんが、複雑な構造においては効力を発揮します。そのような問題は、また別の機会に考えましょう。
まとめ
今回は仮想仕事の原理の基本的な説明と簡単な問題の解説をしました。ポイントは
外力がする仮想仕事 = 内力がする仮想仕事
です。ぜひ押さえてくださいね。